初めての銀行取引で7億円の資金調達実施
対象企業概要
C社(年商2億6千万円、金融機関借入無)は、無認可保育園のFC本部、及び直営の保育園を数園運営している。
経 緯
設立から20年。保育園業界が「無認可保育園」から「認可保育園」へニーズ転換していく中、
自社でも認可保育園を運営すべく行政と交渉を実施、特例的に東京の中心地にて保育園開業が認められた。
業界の動きが大きく変化する中、今後の企業運営を左右する一大プロジェクトであった。
課題と対応
取り組む事業は社会性が高く、国の補助金事業であり、要点を抑えることが出来れば、事業の黒字確保は困難ではない。
しかしながら、C社は20年の業歴において金融機関借入を行った経験がなかった為、金融機関交渉についての知識が全くなかった。
また借入がなかった為に、自社の財務について指摘を受けた経験もなく、財務のケアを全く行ってこなかったのが実情である。
その為、銀行から約3億円弱の不良資産判定を受ける状況(実質債務超過)であり、借入が起こせる状況ではなかった。
弊社は、本件解決に向け特別支援チームを組成し、この資金調達プロジェクトに取り組んだ。
洗い出されたポイントは以下のとおりであった。
ストロングポイント | ウィークポイント |
・事業の社会性が高い ・補助金事業でありリスク抑制可能 ・事業ノウハウが蓄積されている |
・金融機関新規取引であり、取組ハードルが非常に高い ・借入金額が大きく、事業リスクが高い ・財務の健全性が低い |
【金融機関ハードルの解除】
金融機関担当者は新規取引先を開拓するというノルマを背負っているが、金融機関にとって新規取引は非常にリスクが高く、殆どの金融機関が非常に慎重な融資姿勢を見せる。
その中で多額の資金調達を行う為には、まずC社について詳細に金融機関に説明する必要があった。
金融機関は独自の目線で企業のリスクを検証している為「自社の製品は●●が優れています」といった説明の効果は限定的であり、
効率的にかつ効果の高い説明資料を作成する必要がある。弊社は、金融機関出身という最大の強みを活かし、簡潔に、かつ非常に効果的な
説明資料を作成し金融機関に持ち込み、説明を行った。
【事業リスク検証】
どんなに採算性が高い事業であったとしても、年商の3倍という規模の借入を伴う場合には、「事業リスクが高い(失敗した際のインパクトを吸収できない)」という理由で
借入を断られるのが通常のパターンである。弊社としても「イチかバチか」の借入をしようとしている企業には、確実な事業展開を提案させていただくことがある。
しかしC社の場合は、よく検証してみれば事業リスクが低く抑えられるにも関わらず、上記のパターンで何度も融資を断られていた。
弊社はC社のストロングポイントを活用しながら、金融機関にとってのリスクが低く抑えられることを示した。ここでも金融機関が見ているポイントを抑えることが肝要である。
またC社と金融機関双方にとって有意義な借入手法などの調整を行うことで、金融機関の取組ハードルを引き下げていった。
【財務の健全性確保】
財務の健全性については、税理士も含めた経営陣ミーティングにより、方向性を確認した上で取組事項を決め、取組スケジュールを定めた。
資金調達までの時間も限られていた為、取組事項の中で優先順位を決め、効果の高いものを優先的に実践していった。
取組の進捗管理を行い、しっかりとした決算組みを行うことができ、当初想定通りの決算に仕上げることが出来た。
その結果、前期では実質債務超過(要注意先の中でも下位)の格付を付与されていたC社は、決算更新後は正常先上位の格付を付与されるに至った。
以上の結果、C社は7億円の調達ができ、認可保育園の設立が可能となった。